Disease

数日間排便がなくお腹の張りを感じていたにもかかわらず、その後急に腹痛を伴う下痢が起こるという症状は、消化器内科で比較的よくみられるご相談のひとつです。便秘と下痢が交互に現れる状態は珍しいものではありませんが、背景には腸の働きの乱れだけでなく、病気が隠れていることもあります。
一時的な体調不良や生活習慣の影響で起こる場合もありますが、症状が長く続く場合や繰り返す場合には注意が必要です。自己判断で「体質だから」と考えず、原因を確認することが大切です。
私たちの腸は、ぜん動運動によって内容物を送り出しながら便を形成しています。この働きが正常であれば、適度なタイミングで自然に排便が行われます。
腸の動きが過剰になると便が十分に水分を吸収できず下痢になり、反対に動きが低下すると便が長く腸内に留まり、便秘につながります。そのため、便秘と下痢はまったく別の症状に見えても、同じ腸機能の乱れが原因となっていることがあります。
また、腸は自律神経を介して脳と密接に関わっており、精神的ストレスが腸の動きに影響を及ぼします。この関係は「脳腸相関」と呼ばれ、近年特に注目されています。
便秘は単に排便回数だけで判断されるものではありません。2〜3日に1回でも苦痛なく排便できていれば問題ないことがあります。一方で、毎日排便があっても残便感や強いいきみが必要であれば便秘と考えられます。
下痢は、軟便や水様便が続き、排便回数が増加している状態を指します。4週間以上続いたり繰り返したりする場合は慢性下痢として評価され、原因検索が必要になることがあります。
精神的ストレスは腸の働きに大きな影響を与えます。緊張や不安が強いと、自律神経のバランスが乱れ、腸が過剰に動いたり、逆に動きが鈍くなったりします。
その結果、下痢と便秘が交互に起こることがあります。通勤時や会議前、試験前など特定の場面で症状が強くなる場合には、この影響が疑われます。
抗菌薬の使用や食生活の変化により腸内細菌のバランスが崩れると、腸の働きが不安定になることがあります。悪玉菌が増えることで腸に軽い炎症が起こり、便通異常が長引くことがあります。
また、急性胃腸炎のあとに腸の不調が残り、便秘と下痢を繰り返す状態になることもあります。
食事時間が不規則であったり、暴飲暴食が続いたりすると、腸のリズムも乱れやすくなります。睡眠不足や運動不足も便通異常の一因です。
生活習慣の乱れは単独ではなく、ストレスと重なって症状を悪化させることが少なくありません。
過敏性腸症候群は、大腸内視鏡などで明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や便通異常が続く病気です。便秘型、下痢型、混合型があり、便秘と下痢を繰り返す場合は混合型が疑われます。
症状はストレスと関連して悪化しやすく、日常生活に支障をきたすことがあります。
潰瘍性大腸炎やクローン病では、慢性的な炎症によって下痢や腹痛が起こります。血便を伴うことも多く、便通異常が長引く場合には注意が必要です。
若年〜中年で発症することが多く、早期診断が重要です。
大腸がんでは、腫瘍が便の通過を妨げることで便秘と下痢が交互に現れることがあります。特に便が細くなる、血便がある、体重減少を伴う場合には精密検査が勧められます。
便秘と下痢の繰り返しが1か月以上続く場合は、一度消化器内科で相談することが望まれます。特に次の症状がある場合には早めの受診が必要です。
血便がある
強い腹痛を伴う
発熱がある
体重減少がある
市販薬で改善しない
診断では、症状の経過や生活習慣を詳しく確認します。いつから症状があるか、便の性状、腹痛との関係などを問診で確認します。
必要に応じて血液検査、便検査、画像検査を行い、背景に器質的疾患がないか確認します。
大腸内視鏡検査は、大腸粘膜を直接観察できる検査です。炎症やポリープ、がんの有無を確認するために重要です。
便通異常が長引く場合には、原因を明確にするために検査が検討されます。
規則正しい食事は腸のリズムを整える基本です。1日3食を意識し、刺激物や過度な飲酒を控えることが勧められます。
水溶性食物繊維を含む食品は便の状態を整えやすく、海藻類や発酵食品も腸内環境の改善に役立つことがあります。
軽い運動は腸の動きを促し、ストレス軽減にもつながります。散歩やストレッチなど継続しやすい運動が適しています。
睡眠不足や不規則な生活は症状悪化につながるため、生活リズムを整えることが重要です。
便秘薬や下痢止めを自己判断で長期間使用すると、症状の悪化や原因疾患の発見遅れにつながることがあります。症状が続く場合は医療機関で原因を確認することが大切です。
症状に応じて整腸剤、便秘薬、下痢止め、腸の動きを整える薬などが使用されます。原因によって処方内容は異なります。
過敏性腸症候群では、ストレス管理や心理療法が有効な場合があります。薬だけでなく生活面への介入も重要です。
慢性的な便通異常は、短期間で完全に改善しないことがあります。症状の変化をみながら継続的に治療していくことが大切です。
便秘と下痢を繰り返す症状は、比較的よくみられる一方で、背景にさまざまな病気が隠れている可能性があります。単なる体質やストレスと決めつけず、必要に応じて検査を受けることが重要です。
特に血便、腹痛、体重減少を伴う場合には、炎症性腸疾患や大腸がんなどの可能性も考慮する必要があります。早めに原因を確認し、適切な治療を行うことが日常生活の質を守ることにつながります。