Disease

慢性的な腹痛とは、数週間から数か月にわたり腹部の痛みが続く、あるいは繰り返し現れる状態を指します。一時的な体調不良として見過ごされやすい症状ですが、原因はさまざまで、日常生活の影響によるものから治療を必要とする疾患まで幅広く含まれます。
腹痛が長く続くと、「そのうち治るだろう」と考えて受診を先延ばしにしてしまう方も少なくありません。しかし、慢性的な腹痛の背景には消化器疾患や全身疾患が潜んでいることもあり、痛みの程度だけで判断することは難しいとされています。当院では、症状が続く場合には自己判断せず、早めに専門的な診察を受けることをおすすめしています。
腹痛は、症状が現れている期間によって急性腹痛と慢性腹痛に分けて考えられます。急性腹痛は突然発症し、数時間から数日程度の比較的短い期間で強い痛みを伴うことが多く、急な炎症や感染症などが原因となることがあります。
一方で慢性腹痛は、数週間以上にわたって持続したり、症状が軽くなったり悪くなったりを繰り返したりする状態です。強い痛みではなくても、同じ場所が繰り返し痛む、排便や食事と関連して症状が現れるなど、経過に特徴がみられることがあります。軽い鈍痛であっても、長く続く場合は原因を確認することが大切です。
腹痛は、体の中で痛みを感じる仕組みによっていくつかの種類に分けられます。
内臓痛は、胃や腸などの臓器が引き伸ばされたり炎症を起こしたりした際に生じる痛みです。鈍く重たいような痛みとして感じられることが多く、場所がはっきりしない場合があります。
体性痛は、腹膜や腹壁などが刺激されることで起こります。比較的痛む場所が明確で、鋭い痛みとして感じやすいのが特徴です。炎症が進行した場合などにみられることがあります。
障害されている臓器とは異なる部位に痛みを感じることもあります。たとえば胆石症では右肩、膵臓の病気では背中、尿管結石では腰から鼠径部に痛みが広がることがあります。このため、痛む場所だけで原因臓器を断定することはできません。
慢性的な腹痛を引き起こす原因は非常に多く、消化器疾患だけでなく、他の臓器や生活習慣の影響が関係していることもあります。問診や検査を通じて原因を一つずつ確認していくことが重要です。
腹痛の原因として多くみられるのは消化器の病気です。上腹部痛、下腹部痛、食後の不快感など、症状の出方によって疑われる疾患が異なります。
胃や十二指腸の粘膜が傷つき、深くえぐれた状態です。上腹部の痛みのほか、胸やけや吐き気を伴うことがあります。ピロリ菌感染や鎮痛薬の長期使用が関与することがあります。
慢性的に胃の粘膜に炎症が続く状態です。胃もたれや不快感として現れることが多く、食生活やストレス、ピロリ菌感染などが背景にあります。
胃酸が食道に逆流することで炎症が起こり、胸やけやみぞおちの痛みを繰り返すことがあります。食後や就寝時に症状が強くなることがあります。
過敏性腸症候群 は、検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛と便通異常を繰り返す疾患です。ストレスや自律神経の影響が関与すると考えられています。
潰瘍性大腸炎 や クローン病 などが含まれます。慢性的な炎症により腹痛、下痢、血便がみられることがあります。
機能性ディスペプシア は、検査で異常がなくても食後の胃もたれや上腹部痛が続く状態です。慢性腹痛の原因として比較的多くみられます。
腹痛は必ずしも胃や腸だけが原因ではありません。腹部周辺の他の臓器の異常が、腹痛として感じられることがあります。
胆石や胆のう炎、膵炎などでは、上腹部痛や背部痛を伴うことがあります。食後に痛みが悪化することもあります。
尿管結石や腎盂腎炎などでも腹部や側腹部の痛みが生じます。排尿時症状を伴う場合があります。
女性では子宮内膜症や月経困難症などが慢性的な下腹部痛の原因になることがあります。症状の時期や月経との関連が手がかりになります。
ストレスや睡眠不足、不規則な生活習慣は胃腸の働きに影響を与えることがあります。自律神経のバランスが乱れることで腸の動きが不安定になり、痛みや違和感につながることがあります。
特に過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアでは、心理的な要因が症状に影響することが多く、生活環境を見直すことも重要な治療の一つです。
慢性的な腹痛でも、特定の症状を伴う場合には早めの受診が必要です。
以下の症状がある場合は、早急な診察が必要になることがあります。
吐血や黒色便、血便を伴う
発熱や悪寒を伴う
嘔吐が続いて水分が摂れない
急激な体重減少がある
痛みが急に強くなった
強い痛みでなくても、次のような状態が続く場合は一度検査を検討することが大切です。
1週間以上腹痛が続いている
数か月にわたり繰り返す
市販薬で改善しない
痛む場所や症状の性質が変わってきた
慢性的な腹痛では、問診だけでなく必要に応じて複数の検査を組み合わせて原因を調べます。
腹部エコーでは、肝臓、胆のう、膵臓、腎臓などの状態を確認できます。胆石や腫瘤の有無を調べる際に役立ち、体への負担が少ない検査です。
胃や十二指腸の炎症、潰瘍、腫瘍の有無を直接確認できます。慢性的な上腹部痛では重要な検査となります。
大腸の炎症やポリープ、がんなどを調べます。下腹部痛や便通異常が続く場合に有用です。
炎症反応や貧血、肝機能、膵酵素などを確認し、腹痛の背景を調べます。
目に見えない出血の有無を確認し、大腸疾患の評価に役立ちます。
治療と並行して、生活習慣を見直すことも症状の安定につながります。
脂っこい食事や過食、不規則な食事時間は胃腸に負担をかけることがあります。規則正しい食生活を意識することが大切です。
脳と腸は密接に関連しており、ストレスが腹痛に影響することがあります。休息や十分な睡眠を確保し、生活リズムを整えることが重要です。
軽いウォーキングなどの運動は腸の動きを整え、自律神経のバランス改善にも役立つとされています。
慢性的な腹痛は、症状に慣れてしまうことで受診のきっかけを逃しやすい症状です。しかし、長期間続く腹痛の背景には、治療を要する病気が隠れていることがあります。
痛みが軽くても、繰り返す、悪化する、他の症状を伴う場合には、早めに原因を確認することが大切です。特に体重減少や血便などがある場合には、精密検査が必要になることがあります。
慢性的な腹痛は、機能性の不調によることもあれば、消化器疾患や他の臓器の病気によることもあります。症状だけで原因を判断することは難しく、継続する腹痛には適切な診察が欠かせません。
腹痛が長引くときは、市販薬で様子を見るだけでなく、原因を確認することが安心につながります。症状が続く場合や不安がある場合は、早めに消化器内科へ相談することをおすすめします。