Disease

ピロリ菌 

ピロリ菌とは? — 胃に潜む細菌について

ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜表面に生息する細菌です。らせん状の形をしており、鞭毛を使って胃の内部を移動できる特徴があります。胃の中は強い酸性環境であるため、以前は細菌が生息できないと考えられていましたが、ピロリ菌の発見によってその認識は大きく変わりました。

この細菌は「ウレアーゼ」という酵素を持っており、胃内の尿素を分解してアンモニアを生じさせます。アンモニアが周囲の胃酸を中和することで、自らが生きやすい環境を作り出し、胃の中で長期間生息できるとされています。感染してもすぐに症状が現れるとは限らず、気づかないうちに長年感染が続いていることも少なくありません。

ピロリ菌の特徴

ピロリ菌はグラム陰性らせん菌に分類され、慢性的な胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの発症にも関係すると考えられています。1970年代後半から1980年代にかけて胃粘膜から確認され、現在では胃疾患との関連が広く知られるようになりました。

ピロリ菌の感染状況とリスク — 日本人は注意が必要です

日本では多くの方がピロリ菌に感染しているとされ、特に中高年層で感染率が高い傾向があります。一方で若い世代では感染率が低下しており、世代によって大きな差があります。これは生活環境や衛生環境の変化が影響していると考えられています。

いつ・どこで感染するのか

ピロリ菌は多くの場合、乳幼児期に感染します。幼い時期の胃は酸性が弱く、菌が定着しやすいためです。主な感染経路は家庭内での経口感染とされ、食べ物の口移しや食器の共有などが関与すると考えられています。

現在の日本では上下水道の整備が進み、若年層の新規感染は減少傾向です。しかし、過去に感染したまま無症状で経過している方は少なくありません。

胃がんとの深い関係

ピロリ菌感染は胃がんの大きな原因のひとつです。塩分の多い食事や喫煙、飲酒なども胃がんリスクに関与しますが、その中でもピロリ菌は重要な発がん因子とされています。World Health Organizationでも発がん性との関連が認められています。

自覚症状がない場合でも、胃の粘膜では炎症が進行していることがあります。そのため、症状の有無だけで判断せず、検査を検討することが大切です。

ピロリ菌感染が引き起こす病気 — 無症状でも進行することがあります

ピロリ菌に感染すると、胃粘膜に慢性的な炎症が起こり、時間をかけてさまざまな疾患につながることがあります。感染していても症状が目立たないことが多く、気づかないうちに粘膜の変化が進行する点が特徴です。

感染から胃がんへの変化

ピロリ菌感染では、まず慢性胃炎が生じ、その後萎縮性胃炎へ進行することがあります。さらに腸上皮化生と呼ばれる変化が起こると、胃がんの発生母地となる可能性があります。

慢性胃炎・萎縮性胃炎

慢性的な炎症によって胃粘膜が薄くなり、機能が低下した状態です。自覚症状が乏しいこともありますが、長期間放置すると病変が進行することがあります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

再発を繰り返す胃潰瘍や十二指腸潰瘍では、ピロリ菌感染が背景にあることが少なくありません。除菌によって再発リスクが低下するとされています。

胃がん以外の関連疾患

ピロリ菌は胃MALTリンパ腫やIdiopathic thrombocytopenic purpura、機能性ディスペプシアなどにも関連することがあります。みぞおちの痛みや胃もたれ、早期満腹感などが続く場合は、背景に感染がある可能性があります。

ピロリ菌の検査方法 — どのように調べるのか

ピロリ菌の検査には、内視鏡を使わない方法と内視鏡を使う方法があります。症状や既往歴に応じて選択されます。

内視鏡を使わない検査

尿素呼気試験

尿素を含む検査薬を服用し、前後の呼気を調べる方法です。身体への負担が少なく、診断精度が高い検査として広く行われています。

血液・尿による抗体検査

血液や尿中の抗体を調べることで感染歴を確認します。比較的簡便ですが、過去感染との区別が必要な場合があります。

便中抗原検査

便中に含まれる抗原を調べる方法で、現在の感染状況を把握しやすい検査です。除菌後の判定にも用いられます。

内視鏡を使う検査

胃カメラ検査で採取した組織を用いて迅速ウレアーゼ試験や培養検査を行います。胃の状態を直接確認できるため、萎縮性胃炎などの有無も同時に評価できます。

ピロリ菌の除菌治療 — 基本の流れ

除菌治療の基本

除菌治療は、胃酸分泌を抑える薬と2種類の抗菌薬を組み合わせて7日間服用する方法が一般的です。治療終了後には、除菌が成功したか確認する検査を行います。

一次除菌で成功しない場合でも、抗菌薬の組み合わせを変更した二次除菌が行われます。多くの方は二次除菌までで治療が完了します。

最新の治療方針

近年では、より高い除菌率が期待できる治療法が推奨されています。当院でも最新の知見に基づき、患者さんの状態に応じた治療方針を提案しています。

保険適用となる主なケース

慢性胃炎、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などが内視鏡で確認された場合、保険診療で除菌治療を受けられることがあります。

除菌治療中の注意点 — 成功率を高めるために

除菌薬は決められた期間、指示どおりに服用することが大切です。途中で中断すると除菌に失敗し、薬が効きにくい耐性菌が生じる可能性があります。

治療中に気をつけたいこと

治療期間中は飲酒や喫煙を控えることが望ましいとされています。また、刺激の強い食事や脂っこい食事は胃に負担をかけることがあります。

副作用について

軟便や下痢、味覚異常などがみられることがありますが、多くは一時的です。症状が強い場合は医療機関へ相談してください。

除菌後の過ごし方 — 継続的な確認が大切です

除菌判定を受ける

除菌治療後は、一定期間をあけて検査を行い、除菌が成功したか確認します。自己判断で終了せず、判定まで受けることが重要です。

除菌後も胃がんリスクは残ります

除菌によって炎症は改善しますが、すでに進行した萎縮性胃炎や腸上皮化生は完全に元に戻らないことがあります。そのため、除菌後も定期的な胃カメラ検査が推奨されます。

再感染について

現在の日本では再感染率は低いとされています。ただし、家庭内感染を防ぐための衛生面への配慮は引き続き大切です。

早期発見と予防のために

ピロリ菌感染は自覚症状がないまま経過することが多く、気づかないうちに胃粘膜の変化が進行することがあります。無症状であっても、健診で異常を指摘された場合や家族に感染歴がある場合は、一度検査を受けることが検討されます。

当院では、症状の有無にかかわらず、胃の不調や健診結果に不安がある方のご相談に対応しています。早期に感染の有無を確認し、必要に応じて適切な治療につなげることが、将来的な胃疾患の予防につながります。


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