Disease

吐き気(悪心・嘔気)は、胸やみぞおちのあたりにむかつきを感じ、「吐きそう」と思う不快な症状です。日常的によくみられる症状ですが、その背景には一時的な体調不良だけでなく、治療が必要な病気が隠れていることもあります。とくに症状が繰り返す場合や長引く場合には、原因を丁寧に確認することが大切です。
当院でも、「少し気持ちが悪いだけだから」と受診を迷われる方は少なくありません。しかし吐き気は、消化器疾患だけでなく全身の病気によっても起こるため、症状の経過や伴う症状を確認しながら適切に判断する必要があります。
吐き気とは、胃の内容物を吐き出しそうな感覚を伴う不快感を指し、医学的には「悪心」と呼ばれます。日常では「胸がムカムカする」「気持ち悪い」「吐きそう」と表現されることが多く、症状の程度は軽い違和感から強い不快感までさまざまです。
一時的な食べ過ぎや体調不良でみられることもありますが、症状が続く場合や、他の症状を伴う場合には医療機関での評価が必要になることがあります。
吐き気は、実際に吐いていない状態でも「吐きそう」と感じる症状です。一方で嘔吐は、胃の内容物が口から排出される状態を指します。吐き気があっても嘔吐しないこともあり、逆に突然嘔吐が起こることもあります。
この違いを把握しておくと、受診時に症状を伝えやすくなります。
吐き気や嘔吐には、脳の延髄にある「嘔吐中枢」が関わっています。消化管の異常、薬剤、脳への刺激などさまざまな原因によってこの中枢が刺激されると、胃の運動が通常とは逆方向に変化し、吐き気や嘔吐が生じます。
刺激が比較的軽い場合は吐き気のみで済みますが、強くなると実際に嘔吐に至ることがあります。
吐き気の原因は幅広く、消化器の病気だけとは限りません。一般的には、吐き気の背景として消化器疾患が多いとされていますが、それ以外の全身疾患が関係することもあります。
症状の特徴や随伴症状を確認することで、原因の方向性をある程度絞ることができます。
消化器疾患による吐き気は比較的多くみられます。胃や食道、腸、胆のう、膵臓などの異常によって症状が起こることがあります。
ウイルスや細菌感染、刺激の強い食事、飲酒などにより胃腸に炎症が起こる状態です。吐き気に加えて腹痛や下痢、発熱を伴うことがあります。
逆流性食道炎では、胃酸が食道へ逆流することで胸やけや呑酸、げっぷとともに吐き気が生じることがあります。食生活や生活習慣の影響で若い世代にもみられます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍では、みぞおちの痛みとともに吐き気が起こることがあります。出血を伴うと吐血や黒色便がみられる場合もあります。
腸閉塞は腸の内容物が流れなくなる状態で、腹部膨満感や強い腹痛、繰り返す嘔吐を伴います。早急な診察が必要なことがあります。
消化器以外にも、脳や心臓、内耳、薬剤などが原因になることがあります。
くも膜下出血や脳出血などでは、突然の頭痛とともに吐き気や嘔吐が起こることがあります。
心筋梗塞では、胸の圧迫感や冷や汗とともに吐き気が現れることがあります。消化器症状と思っていても循環器疾患である場合があるため注意が必要です。
服用中の薬の副作用、食中毒、強いストレス、不安障害などでも吐き気が生じることがあります。原因が一つではなく複数重なる場合もあります。
吐き気が続く場合には、背景となる疾患を確認することが重要です。とくに普段と異なる症状や、強い痛みを伴う場合には注意が必要です。
消化管の病気では、吐き気に加えて腹痛、胸やけ、下痢、便秘などを伴うことがあります。
感染性胃腸炎では、急に吐き気が始まり、腹痛や下痢を伴うことが多くみられます。
食後や就寝前に症状が強くなりやすく、胸やけや酸っぱい液体が上がる感覚を伴います。
腹部が張って便やガスが出にくくなり、嘔吐を繰り返すことがあります。緊急対応が必要になることがあります。
胆のうや膵臓の病気でも吐き気が現れることがあります。
胆石症や急性胆のう炎では、右上腹部痛とともに吐き気がみられます。脂っこい食事後に悪化しやすい傾向があります。
急性膵炎では、みぞおちから背中にかけての強い痛みと吐き気が特徴です。重症化することもあるため早めの受診が必要です。
軽い吐き気で原因がはっきりしている場合には、自宅で様子を見ることもあります。ただし、症状が悪化したり長引いたりする場合は受診を検討してください。
吐き気があるときは、身体を締めつける衣服をゆるめ、楽な姿勢で安静に過ごすことが大切です。横になる場合は顔を横向きにすると誤嚥予防につながります。
においに敏感になることもあるため、換気を行い、食べ物や香りの強いものを避けると症状が和らぐことがあります。
嘔吐後すぐに大量の水分や食事を摂ると、再び吐き気が強くなることがあります。嘔吐がおさまった後は少量の水分から始め、問題なければおかゆやうどんなど消化の良い食事へ進めます。
市販の制吐薬で一時的に改善することもありますが、原因によっては適切でない場合があります。症状が続く場合は自己判断だけに頼らず受診が望まれます。
吐き気の原因を正確に把握するには、症状の経過を整理しておくことが役立ちます。
症状が始まった時刻、食事内容、嘔吐の回数、吐いたものの色や性状、腹痛や発熱の有無などを確認しておくと診察がスムーズです。
以下の症状を伴う場合は、速やかな受診が必要です。
突然の激しい頭痛と吐き気
胸の圧迫感や冷や汗を伴う
吐血や黒色便がある
水分がまったく摂れない
強い腹痛を伴う
意識がぼんやりしている
原因に応じて、血液検査、腹部超音波検査、CT検査、内視鏡検査などを行います。
胆石や胆のう炎、膵炎などを確認するために用いられます。
腹部だけでなく、必要に応じて頭部の異常確認にも用いられます。
上部消化管内視鏡検査では、食道や胃、十二指腸の粘膜を直接観察し、炎症や潰瘍、腫瘍の有無を確認します。
吐き気は一時的な体調不良でみられることもありますが、背景に重大な病気が隠れている場合もあります。とくに繰り返す症状や長引く症状は放置せず、原因を確認することが大切です。
胃腸の病気だけでなく、脳や心臓、薬剤、副作用、ストレスなど多くの要因が関係します。自己判断で決めつけず、症状全体をみて判断することが重要です。
数日以上続く場合や再発を繰り返す場合には、慢性的な消化器疾患や全身疾患が隠れていることがあります。早めの受診が原因究明につながります。
吐き気が続く場合、胃の病気が原因となっていることも少なくありません。内視鏡検査によって原因を確認できるケースもあり、適切な治療方針を決めるうえで役立ちます。