Disease

膵炎は、お腹の奥にある膵臓に炎症が起こる病気です。みぞおちの強い痛みや背中に抜けるような痛みがみられることがあり、急性の場合は突然発症して重症化することもあります。一方で、慢性的に炎症が続くタイプでは、症状がはっきりしないまま進行することもあるため注意が必要です。
膵臓は胃の裏側に位置しており、異常があっても初期には自覚しにくいことから「沈黙の臓器」と呼ばれることがあります。そのため、腹痛を単なる胃の不調と考えて様子を見るのではなく、症状の特徴を知り、必要なタイミングで受診することが大切です。ここでは、膵炎の種類や症状、検査、治療についてわかりやすくご説明します。
膵炎を理解するうえで、膵臓の働きを知っておくことが役立ちます。膵臓は長さ約15cmほどの細長い臓器で、胃の後ろ側にあり、消化と血糖調節の両方に関わっています。
膵臓は、アミラーゼやリパーゼなどの消化酵素を含む膵液を作り、十二指腸へ分泌します。これにより、炭水化物や脂肪、たんぱく質の消化吸収が行われます。
膵臓は、インスリンやグルカゴンといったホルモンを分泌し、血糖値を一定に保つ役割も担っています。膵炎が進行すると、この機能が低下し糖尿病につながることがあります。
膵炎には、大きく分けて急性膵炎と慢性膵炎があります。同じ膵臓の炎症でも、発症の仕方や経過、治療方針は大きく異なります。
急性膵炎は、膵臓内で消化酵素が異常に活性化し、自身の組織を傷つけることで起こる急性の炎症です。突然強い腹痛が現れ、短時間で症状が悪化することがあります。
急性膵炎では、みぞおちから上腹部にかけて強い痛みが起こり、背中に広がることがあります。吐き気や嘔吐、発熱を伴うこともあり、重症化すると全身状態が急速に悪くなる場合があります。
多くは適切な治療で回復しますが、一部では膵臓周囲の壊死や感染、循環不全などを起こし、集中治療が必要になることがあります。早期の診断と入院治療が重要です。
慢性膵炎は、膵臓の炎症が長期間続き、正常な組織が徐々に線維化して機能が低下していく病気です。急性膵炎を繰り返した後に発症することもあります。
初期には、食後や飲酒後にみぞおちや背中の鈍い痛みが出ることがあります。症状が軽いため、市販薬で様子を見る方も少なくありません。
病状が進むと、膵臓の機能が低下して脂肪便や下痢、体重減少がみられることがあります。また、インスリン分泌低下により糖尿病を発症する場合もあります。
膵炎の原因はひとつではなく、生活習慣や体質、他の病気が関係していることがあります。
急性膵炎では、アルコール摂取と胆石が代表的な原因です。そのほかにも、高中性脂肪血症や薬剤、内視鏡処置後などがきっかけになることがあります。
長期間の多量飲酒は膵臓に大きな負担をかけ、急性膵炎の発症につながることがあります。
胆石が胆管や膵管の出口を塞ぐことで、膵液の流れが妨げられ、炎症を引き起こすことがあります。
慢性膵炎でもアルコールは重要な原因です。長期的な飲酒習慣がある方では、膵臓への慢性的な障害が進みやすいとされています。
明らかな原因が見つからない特発性膵炎もあり、特に女性では一定数みられます。
まれに、膵炎に関連する遺伝子異常が背景にあることも知られています。
膵炎の発症や進行には、生活習慣が大きく関わります。
長期間の飲酒習慣がある
喫煙習慣がある
胆石症を指摘されたことがある
高中性脂肪血症がある
これらに当てはまる方は、腹部症状があれば早めの受診が勧められます。
膵炎では、痛みの部位や程度が受診の目安になります。胃痛と感じていても、実際には膵臓が原因であることがあります。
急性膵炎では突然の強い腹痛が特徴です。みぞおちを中心とした痛みが背中に広がることがあり、前かがみになると少し楽になることがあります。
強い持続的な痛みで、横になることがつらい場合もあります。食後や飲酒後に始まることがあります。
悪心や嘔吐、発熱を伴うこともあり、全身のだるさを感じることがあります。
次のような症状がある場合は、速やかな受診が必要です。
突然の激しいみぞおちの痛み
背中まで広がる強い痛み
冷や汗やめまいを伴う
意識がぼんやりする
痛みが強く動けない
慢性膵炎では、症状が緩やかに続くことが多く、長期間放置されることがあります。
食後の腹痛、下痢、脂っぽい便、食欲不振などがみられることがあります。
病状が進行すると、口渇や多尿など糖尿病に関連する症状が現れることがあります。
膵炎の診断では、症状だけでなく血液検査や画像検査を組み合わせて評価します。
膵炎では膵酵素の上昇が重要な所見です。
血液中のアミラーゼやリパーゼを測定し、膵臓の炎症を確認します。特にリパーゼは診断に有用とされています。
白血球数やCRPを確認し、炎症の程度や重症度を判断します。
画像検査は膵臓の状態を直接確認するために重要です。
腹部超音波は身体への負担が少なく、初期評価として行われることが多い検査です。
CTでは膵臓の腫れや周囲炎症、壊死の有無を確認できます。重症度判定にも役立ちます。
胆管や膵管の状態を詳しく調べる際に行われ、胆石の確認にも有用です。
膵炎の治療は、急性か慢性かによって異なります。いずれも原因への対応と膵臓への負担軽減が中心です。
急性膵炎では入院治療が基本となります。
膵臓を休ませるために食事を一時中止し、点滴で水分や栄養を補います。
強い腹痛に対して鎮痛薬を使用し、全身状態を整えます。
胆石が原因の場合は、必要に応じて ERCP による処置が検討されます。
慢性膵炎では長期的な管理が重要です。
禁酒、禁煙、脂肪分を控えた食事が基本となります。再発予防にも欠かせません。
痛みを抑える薬や消化酵素薬を使用し、必要に応じて糖尿病治療も行います。
膵炎は、急性であっても慢性であっても、早期発見と適切な対応が非常に重要です。急性膵炎では突然の激しいみぞおちの痛みが代表的で、放置すると重症化することがあります。慢性膵炎では痛みが軽くても進行し、消化機能や血糖調節に影響を及ぼす場合があります。
とくに、飲酒後の腹痛や繰り返す背部痛、食後の不快感が続く場合には、単なる胃腸症状と自己判断せず、消化器内科での評価が大切です。膵臓の病気は早い段階で対応することで、重症化や合併症を防ぎやすくなります。気になる症状がある場合は、早めの受診をご検討ください。