Disease

排便後にも「まだ便が残っている気がする」「お腹が重くすっきりしない」と感じることはありませんか。こうした症状は「残便感」と呼ばれ、実際に便が腸内に残っている場合だけでなく、便が残っていなくても違和感として生じることがあります。
残便感は一時的な体調変化として起こることもありますが、医学的には便通異常の一症状として位置づけられています。日本で用いられている診療ガイドラインでも、便秘症状のひとつとして扱われており、軽く考えず原因を見極めることが大切です。
日常的に起こりやすい症状であるため、「そのうち治るだろう」と様子を見てしまう方も少なくありません。しかし背景には、生活習慣の影響だけでなく、治療が必要な消化器疾患が隠れていることもあります。
腸は、水分摂取量や食事内容、運動不足、ストレスなど日常生活の影響を受けやすい臓器です。水分不足が続くと便が硬くなり、腸内を移動しにくくなることで排便後にも違和感が残ることがあります。
また、排便を我慢する習慣が続くと、便意を感じる機能そのものが鈍くなり、排便のリズムが乱れやすくなります。その結果、便が十分に排出されず、残便感として自覚される場合があります。
残便感の原因は、大きく分けて腸や肛門の働きの乱れによる「機能的な問題」と、病変が存在する「器質的な異常」に分けられます。
前者は便秘や腸の動きの低下など比較的身近な要因が中心ですが、後者には大腸ポリープや大腸がんなども含まれます。同じ症状でも背景は大きく異なるため、自己判断だけで市販薬を続けるのではなく、原因に応じた対応が必要です。
残便感を引き起こす背景には複数の疾患があり、原因はひとつではありません。実際の診療でも、似た症状でも異なる疾患が見つかることがあります。
機能性便秘は、大腸に形の異常がないにもかかわらず、腸の動きが低下したり排便機能がうまく働かなかったりすることで起こります。
便が出ていても、直腸内に便が残っているような感覚が続くタイプです。いきんでも十分に出し切れず、排便後も違和感が残ることがあります。
過敏性腸症候群では、腸の運動異常や知覚過敏により、腹痛や便通異常が慢性的に繰り返されます。
便秘型では、少量しか排便できず、残便感を伴うことがあります。ストレスや生活環境の変化が症状に影響することも多くみられます。
肛門周辺の病気も残便感の原因になります。
痔核では、肛門の静脈が腫れることで違和感が生じ、排便後に残便感を訴えることがあります。出血や脱出を伴うこともあります。
裂肛を繰り返すと、痛みから排便を我慢しやすくなり、便秘や残便感につながることがあります。
直腸の一部が突出して便がたまりやすくなる状態で、女性にみられることがあります。加齢や骨盤底筋の低下が背景になることがあります。
残便感で特に注意が必要なのが、大腸がんや大腸ポリープです。
直腸に腫瘍ができると、便の通り道が狭くなり、排便後にも出し切れない感覚が続くことがあります。便が細くなる、排便回数が増えるといった変化を伴うこともあります。
大腸ポリープも大きくなると便通異常を引き起こすことがあります。自覚症状が乏しいことも多く、検査で偶然見つかるケースも少なくありません。
潰瘍性大腸炎やクローン病などの慢性的な炎症でも、排便後の違和感が続くことがあります。
残便感は一時的なこともありますが、長引く場合やほかの症状を伴う場合は注意が必要です。
以下のような症状がある場合は、早めに消化器内科で相談することが勧められます。
2週間以上残便感が続いている
血便や黒い便がみられる
便が細くなった
体重減少や貧血がある
腹痛や腹部膨満感を伴う
家族に大腸がんの既往がある
「痔だろう」「ストレスのせいだろう」と考えて受診を先延ばしにしてしまうことがあります。しかし、初期の大腸がんは症状が乏しいこともあり、症状が現れた時点で進行している場合もあります。
生活習慣の影響が背景にある場合には、日常の見直しが改善につながることがあります。
便の多くは水分で構成されており、水分不足は便を硬くします。こまめに水分を摂ることは、排便をスムーズに保つ基本です。
野菜や果物、海藻、きのこ類などを適度に取り入れることで、便の性状が整いやすくなります。
ヨーグルトや納豆などの発酵食品は腸内環境を整える助けになります。
ウォーキングなどの軽い運動は腸の動きを促進します。座りっぱなしの生活が続く方では、活動量を増やすだけでも変化がみられることがあります。
朝食後など便意が起こりやすい時間帯にトイレに座る習慣をつけることが役立ちます。便意を我慢しないことも重要です。
残便感が続く場合には、原因を特定するために検査が行われます。
まず症状の経過や排便状況、食生活などを確認し、必要に応じて血液検査や腹部超音波検査を行います。
大腸内視鏡検査は、大腸の粘膜を直接観察できる重要な検査です。
残便感に加えて血便や便の形の変化がある場合には、器質的な病変を確認するために大腸カメラが有用です。ポリープや腫瘍、炎症の有無を直接確認できます。
原因によって治療法は異なります。
生活習慣の改善や整腸薬、便秘治療薬などを組み合わせて対応します。
ポリープであれば内視鏡的切除、がんが疑われる場合には専門施設での精査・治療が必要になります。
残便感は不快であっても、受診を後回しにされやすい症状です。しかし、背景には生活習慣だけでなく、炎症性腸疾患や大腸がんなど治療が必要な病気が隠れていることがあります。
以下に当てはまる場合は、医療機関で相談を検討してください。
残便感が長く続く
血便がある
便の太さや形が変わった
腹痛や体重減少を伴う
受診時には、いつから症状があるか、便の状態や頻度、血便の有無などを記録しておくと、診察時に役立ちます。早めに原因を確認することが、安心につながります。